| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-05 (Oral presentation)

グリーンアノールの総合防除に向けて-薬剤を用いた捕殺及び忌避の試み-

*戸田光彦・高橋洋生・秋田耕祐・中川直美・鋤柄直純(自然研)

小笠原諸島におけるグリーンアノールの防除では、多数の粘着トラップを樹幹に設置することにより地域的な密度低減化が達成されたものの、防除対象地域からの完全排除には至っていない。本研究では、対象空間からアノールを完全に排除する技術の確立を目指し、薬剤および熱を用いた燻蒸の有効性を検討した。

まず、市販の殺虫剤4種をアノールの背面に塗布して効果を比較する実験を行ない、フェンプロパトリンが有効であることを確認した。また、高温耐性評価実験により、本種は50℃以上の空気に10分間以上曝されると致死することを確認した。これらの結果を踏まえて実施した燻蒸実験では、野外に設置した温室(H195×W143×D73 cm)に薬剤を1-20μmの微粒子にして充満させ、内部のアノールの致死率を調べた。フェンプロパトリン剤を90秒間噴霧した条件では、対照として水を用いた条件と比べて有意にアノールの致死率は高かった。この際、個体の移動を制限した場合の致死率は高かったものの、移動を制限しなかった場合の致死率は4割程度にとどまった。ただし、本種の活動が停止する夜間に薬剤を噴霧することで致死効果が上昇する傾向があった。温室内の気温は夏期の日中には55℃を超え、薬剤を使わなくても、温室内上部に固定したアノールが高い割合で致死することが確認された。また、薬剤による特定場所からの排除効果を確かめるため、フェンプロパトリン剤・市販のヘビ用忌避剤・植物性の芳香剤(ハッカ油)を飼育個体に提示する試験を行ったが、明瞭な忌避効果は確認されなかった。

今後、アノールの侵入・定着の段階や地域の特定及び防除目的に応じて、薬剤やトラップ、遮断フェンス等の異なる技術を適切に組み合わせた「総合防除の立案」が重要であると考えられた。


日本生態学会