| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-07 (Oral presentation)

霞ヶ浦におけるカワヒバリガイの分布拡大の現状:2006-2012年の比較

*伊藤健二(農業環境技術研究所), 瀧本岳(東邦大・理学部)

特定外来生物カワヒバリガイは1990年代初頭に揖斐川を含む木曽川水系と琵琶湖・淀川水系に侵入・定着が報告され、関東地方では2005年に群馬県の大塩湖と茨城県の霞ヶ浦で生息が報告されている。その後も新たな地域での生息報告が相次いでいることから、現在も本種の分布拡大が進行していることはほぼ間違いないと考えられる。しかし、本種が侵入した後の分布・密度の経年変動について十分な情報がなく、現在も拡大が続いているのか、密度は増大傾向にあるのかなどについては不明な点が多い。

カワヒバリガイの分布拡大の現状を明らかにすることを目的に、関東最大の湖である霞ヶ浦の湖岸全域を対象に定量調査を行った。また、霞ヶ浦における分布拡大速度の推定と将来予測を行うために、2006年に行った湖岸全域の調査結果(伊藤 2007)との比較を行った。調査は湖岸1kmごとに一回、湖岸5mの範囲を1人10分間の探索を行い、そこで得られたカワヒバリガイの個体数を密度の指標とした。

調査の結果、2012年には霞ヶ浦湖岸の約8割でカワヒバリガイの生息が確認され、採集個体数は2006年に比べて平均で3.8倍に増加していた。2006年と2012年の分布を比較すると、2006年の生息地から約11km離れると定着確率が半減することが示された。この推定値を元に2012年から6年後の分布を推定すると、2018年には霞ヶ浦の湖岸全域にカワヒバリガイが定着することが予測された。


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