| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-13 (Oral presentation)

野外操作実験による樹木の温暖化への応答:コナラにおけるトランスクリプトーム解析

*宮崎祐子,門田有希(岡山大・院・環境生命),中路達郎,日浦勉(北大・苫小牧研究林)

温暖化等の環境変化は、樹木の生理反応を通して個体の維持等に影響を与えると想定される。一方、温暖化に対する樹木の応答反応は様々で、これまでに想定されていない反応も含め、全体像を捉えることは困難である。そこで本研究では、温暖化処理を行った際に、生理反応の初期段階として起こる遺伝子発現の変化を明らかにするため、複数の時期から採取した複数の器官において網羅的遺伝子発現解析を行った。

温暖化実験は北海道大学苫小牧研究林のコナラ成木3個体OTCC(Open Top Canopy Chamber、2m四方の透明アクリル板で樹冠上部の一部を囲う)を設置することで行った。OTCC内部はOTCC外部と比較して日中の平均気温が1.17度上昇していた。OTCC内部(温暖化処理)と同個体のOTCC外部(コントロール)からそれぞれ葉、芽、雌花、雄花(開花直後のみ)を2012年6月〜7月に採取し、遺伝子発現解析試料とした。採取した試料は次世代シーケンサーIllumina HiSeq 2000を用いてde novoトランスクリプトーム解析を行った。マッピングされたリードを用いてDEGseq(Wanget al. 2010)により発現解析を行い、温暖化処理と無処理の間で発現に差のある塩基配列を抽出した。さらにBLASTプログラムを用いてデータベース(DDBJ/EMBL/GenBank)上の既知遺伝子との相同性検索を行った。その結果、温暖化処理により、光合成関連遺伝子や花粉管伸長関連遺伝子等の発現が高く、花成制御遺伝子等の発現は低く制御されていた。今後、これらの遺伝子の発現挙動を詳細に解析することで、温暖化に対する様々な応答反応の全体像を捉えていく予定である。


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