| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-15 (Oral presentation)

対流圏オゾン濃度勾配(FACE)に沿ったダイズ群落の葉面積、窒素、葉群光合成速度の変化

*及川真平,Elizabeth A Ainsworth

きれいな空気は人間の健康、豊かな生活を支える食糧供給や自然保護にとって不可欠である。しかし、世界中のあらゆる地域で空気の汚染が進行している。オゾンはその強力な酸化力により、作物・林産物や自然植生へのダメージが危惧されている汚染物質の代表格である。現在、対流圏オゾン濃度は35〜40 ppb(産業革命前の2倍)に達し、今後50年間でさらに20%上昇すると予測されている。汚染を食い止める努力も欠かせないが、同時に農業・林業における栽培品種・方法の改変、感受性の高い野生種や地域の保護といった対応も必要であろう。こうした背景の中、汚染物質のさらなる増加が農地を含む生態系のプロセスに及ぼす影響について理解が求められている。本研究では、開放型ガス付加実験施設FACEにおいて、9レベルのオゾン濃度下(最低37 ppb、最高116 ppb [日中の平均])でダイズを育成した。ダイズはオゾン感受性が高い作物として知られる。特に感受性の高い品種Dwightと低い品種IA-3010を対象とした。濃度勾配を設けたのは、各特性に対するオゾンの影響が生じる閾値濃度を検出するためである。オゾン濃度上昇が地上部の乾物生産、葉群内の葉面積、光強度、窒素濃度の分布に及ぼす影響、そしてそれらの光合成速度に対する重要性を解析した。Dwightの乾物生産、葉面積そして窒素吸収量はオゾン濃度上昇に伴い直線的に低下した。一方IA-3010では低下が見られなかった。両品種共、個体光合成速度の一貫した低下は検出されなかった。高濃度オゾン下の乾物生産の低下は光合成速度の低下に依らないことが示唆される。なぜ光合成速度は低下しなかったのか? 乾物生産、葉面積、窒素吸収量と光合成速度の間のオゾン応答の相違はどのように説明されるのか? 以上の疑問について、地域のダイズ栽培法の特徴と併せて議論する。


日本生態学会