| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-16 (Oral presentation)

落葉樹・常緑樹における葉光合成速度の変動と光・水利用―どんな環境要因が森林樹木の光合成を制限するか?

*吉村謙一(京大・生態研), 森千佳(奈良女子大・人間文化), 小南裕志(森林総研・関西), 深山貴文(森林総研・関西), 石田厚(京大・生態研)

気孔の開閉は葉内二酸化炭素濃度に大きく影響を及ぼすため、個葉の光合成速度は光環境とともに水分環境に対しても依存する。光合成と光・水・温度といった環境要因の関係についてはこれまで数多くの研究が行われ、モデル化されてきた。野外では光環境は1日周期で変動するのに対して、水分環境は降水から次の降水までのおよそ1週間程度の周期で変動し、温度は1年を周期に変動する。また、光環境が変動するとその変動に対して瞬時に光合成が変動するのに対して、降水に対して光合成速度はそれほど早く反応しない。そのため、本研究では光・水・温度環境とともに光合成もモニタリングすることによって、光合成速度の時系列変動が環境要因の変動に対してどのように反応するのかに注目して、光合成速度と環境要因の関係を記述することにした。

光合成速度の季節変化としては温度の低下とともに光合成は低下するが、冬季にたまにみられる暖かい日には光合成の上昇がみられず、温度に対して早い反応を示しているわけではなかった。光合成の短期的な変化としては降雨直後の光合成速度は高く、乾燥にしたがって低下する傾向がみられた。このように光合成速度の変動には周期性の異なる各環境要因の変動が相互作用をもちながら影響していることがわかった。


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