| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-23 (Oral presentation)

光合成不適期間の効果を組み込んだ最適葉寿命モデルの数理解析

*関元秀,高田壮則(北大・地球環境)

葉寿命は植物種によって様々で、また同一種でも生育環境が異なれば葉寿命が異なることが知られている。Kikuzawa(1991)のモデルでは、個木が同時につけておける葉の総数に限度があり、また各葉の炭素同化性能が経時劣化すると仮定される。さらに、個木が展葉~落葉の期間【葉寿命】と落葉~展葉の期間【インターバル】の2つを生活史戦略として有しているとし、それによって個木の生涯炭素収支が最大化される戦略を最適戦略と呼ぶことにする。このモデルで個木が生涯炭素収支を最大化するためには、同化性能がゼロではないがある程度低下してしまった段階で既存の葉を落とし、即座にまたは間隔をおいて代わりの新鮮な葉を展開することになる。葉の一日の純光合成量がマイナスになる冬季や乾季【光合成不適期間】が存在しない熱帯雨林のような環境では、最適インターバル値がゼロであることが自明で、Kikuzawa(1991)はこの環境下で最適葉寿命を算出する公式を得た。一方、光合成不適期間が存在する季節性環境下での最適葉寿命・最適インターバルを得る数学的手法は確立されずにいた。我々は「光合成不適期間が終わるまで待ってから(つまり春になってから)展葉する」など、妥当と思われるいくつかのインターバル決定戦略を検討し、各インターバル決定戦略下で個木生涯収支を最大化する葉寿命を算出する方法を開発した。本講演では、現実的なパラメーター範囲内での網羅的な数値計算の結果を紹介し、「年に複数回展葉する」戦略や、「光合成好適期間の最中に葉を付け替える」戦略が時として「冬直前に落葉し春先に展葉する」戦略よりも個木生涯収支を大きくすることを示す。


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