| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-04 (Oral presentation)

基底資源による2種類の適応的防御がIGP系に与える影響

*池川雄亮,江副日出夫,難波利幸 (大阪府大・理・生物)

被食者が自身の行動や形態を変化させることで捕食を回避する適応的防御は自然界で普遍的に観察される。例えば、エゾアカガエルの幼生は、ギルド内捕食者であるヤゴに対しては尾鰭を高くするのに対し、ギルド内被食者であるサンショウウオの幼生に対しては頭部を膨らませることによって、捕食を回避することが知られている (Kishida and Nishimura 2005)。後者はサンショウウオの幼生に対してのみ防御効果があるスペシャリスト型の防御であるが、前者はサンショウウオの幼生にも効果があるジェネラリスト型の防御である。このように、自然界では型の異なる複数の防御を使い分ける生物が存在するにもかかわらず、両方の型を考慮した適応防御の理論研究は少ない。

そこで本研究では、基底資源の適応的防御を考慮したギルド内捕食系モデル (Nakazawa et al. 2010)を拡張し、2種類の防御が系の存続、安定性に与える影響と漸近状態における防御の有無を調べた。その結果、2種類の適応的防御の併用はそれぞれの種の存続には影響しなかったが、それぞれの防御が単独の場合には不安定な3種共存状態を安定化させることが分かった。この効果はギルド内捕食が弱いときほど強く働いていた。また、スペシャリスト型防御の効率が十分に大きければ、3種共存領域における基底資源の平衡個体数は、2種類の防御の併用によって、それぞれの防御が単独の場合に比べて、増加した。逆に、スペシャリスト型防御の効率が小さい場合、基底資源の平衡密度は減少した。以上の結果より、2種類の防御の併用が群集の安定的な存続に寄与していることが示唆された。一方、2種類の防御の併用が常に基底資源にとって最適であるとは限らないことも示された。


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