| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-20 (Oral presentation)

冷温帯広葉樹林における土壌呼吸に対する土壌生物呼吸の寄与率の変動と制御要因

*友常満利, 増田莉菜(早稲田大・院・先進理工), 吉竹晋平(岐阜大・流圏セ), 安西理(早稲田大・院・先進理工), 小泉博(早稲田大・教育)

土壌呼吸(SR)に対する土壌生物呼吸(HR)の寄与率の変化が森林生態系の炭素収支に与える影響を明らかにするため、トレンチ法と多項回帰式を用いて、HRの寄与率の季節変化と年変化を測定した。また、土壌温度(ST)や土壌水分(SWC)が呼吸量と寄与率に与える影響を明らかにするため、これらが上昇した時の呼吸量と寄与率を推定した。

STとSWCの上昇は、呼吸量と寄与率に対して異なる影響を与えた。即ち、STの上昇はSWCと比べてより大きな呼吸量の増加を引き起したが、SWCの上昇はSTと比べてより大きな寄与率の減少を引き起こした。このような寄与率の大きな変化は、HRと根呼吸のSWCに対する応答性の大きな違いに起因している。これらの結果は、STとSWCの両方が同時に変化する野外環境において、呼吸量や寄与率が複雑に変化することを示唆している。一般的に、ある年の森林生態系のHR量を算出するために、他の年に推定された寄与率が利用される。本研究においては2010年と2011年の年平均寄与率に大きな差は見られなかったが、シミュレーションの結果から、STやSWCが高い年には年平均寄与率はより低くなることが示された。そのため、大きな気候変動の際には、①年平均寄与率が大きく変化すること、②異なる年に推定された寄与率を利用すると、算出されるHR量に誤差を生じることが予想された。また、本研究においてSTの上昇は、従来通り土壌有機物の分解を促進させるが、SWCはSTと分解速度の関係やSRに対するHRの寄与率を大きく変化させることが明らかになった。したがって、森林生態系におけるより正確な炭素循環・収支を明らかにするためには、SWCの変動や土壌有機物の分解速度とSWCとの関係を明らかにすることが重要である。


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