| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-02 (Oral presentation)

インドネシア、北スラウェジ、タラワアン川流域における水銀汚染調査

*森 敬介(国水研),マルクス ラスート(サムラトゥランギ大・海洋水産)

本地域では1996年に新しい金の鉱床が発見され、1998年から小規模の金鉱石の精練所が作られ、年々増加している。そこから環境への水銀流出が起こっている。2011ー2012年に川に沿った3つの村を選び、底泥、魚類と餌生物、住民の毛髪の採集調査を行った。3つの村の概要は次の通りである。Talawaan Dimembe村(TD):上流域、精練所集中地区の直下で、人口2,500で隣接した他の村との交流がある ;Talawaan Atas村(TA):中流域、孤立した農村、人口900; そして、Talawaan Bajo村(TB):河口域、孤立した漁村、人口1,500。3つの村の複数の調査地点で、堆積物サンプル200個、魚と餌生物(底生動物)300サンプル、および人間の毛髪サンプル500個を得た。全サンプルの総水銀(THg)と選択したサンプルのメチル水銀(MeHg)を分析した。生物濃縮で重要となる魚類の食性を確認するために、胃内容物を調べた。

高い水銀濃度を示した魚はすべて肉食魚で、特にTDで高い値を示したが、他の場所でも確認された。しかし、草食魚の全ては低い値を示した。TDにおける底泥と魚の総水銀濃度(THg)の最大値は1.14 ppbおよび1.30ppmであり、その他の2つの村(底泥:0.11と0.07ppb、魚0.33ppmと0.74ppm)より高かった。TDにおける底泥と魚の高い水銀値は、精練所からの水銀流出に由来しており、下流へいくほど薄まっている。しかし、毛髪の水銀値に関しては、TD(サブサンプルによる平均THg=1.94 ppm)はTB(2.77ppm)とTA(1.19ppm)との中間の値を示した。底泥、魚類と餌生物、毛髪の水銀濃度を比較し、3つの村における水銀汚染レベルと生物濃縮状況の違い、および住民への影響について検討する。


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