| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-19 (Oral presentation)

音声録音によるオガサワラヒメミズナギ繁殖地の探索

*川上和人(森林総研), 堀越和夫(小笠原自然文化研), 鈴木創(小笠原自然文化研), Matthew McKown (UCSC), Peter Pyle(IBP)

オガサワラヒメミズナギドリは、ミッドウェイ諸島で 2例、小笠原諸島で6例しか確実な記録がない世界的希少種である。過去20年間に小笠原でしか記録がないため、現在の主な生息地は小笠原と考えられている。ただし、ここでの記録は全て死亡個体または保護個体であり、野生下での生息状況は不明である。本種の保全のためには、好適な繁殖環境および繁殖地を解明する必要がある。このような背景から、小笠原諸島におけるオガサワラヒメミズナギドリの生息地の探索を行った。

我々はまず、本種の過去の生息地を明らかにするため、母島石門および南島にて発見された海鳥の骨を精査した。この結果、前者では134個体のうち1.5%で、後者では46個体のうち43%が本種と考えられた。母島石門は高木湿性林に覆われ、過去にはミズナギドリ類の繁殖地だったと考えられる。南島は低木および草地に覆われ、現在も多数の海鳥類が繁殖している。両地点で見つかったことから、この鳥は森林から草地までの多様な環境で繁殖していた可能性がある。

次に、現在の生息地を明らかにするため、父島属島の海鳥繁殖地に音声録音装置を設置した。ミズナギドリ類は、繁殖地で夜間に種特異的な声で鳴くため、本種の繁殖期と考えられる冬期に調査した。比較には、1990年代前半にミッドウェイで録音された鳴き声を用いた。その結果、東島にて本種の声が記録された。このことから、本種はこの島において繁殖している可能性がある。東島では、侵略的外来種ノヤギ、クマネズミおよびトクサバモクマオウの駆除が行われたが、外来植物であるギンネム、ジュズサンゴが現在も繁茂し環境が大きく変化している。この鳥の保全のためには、これらの外来植物の管理が必須である。


日本生態学会