| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-21 (Oral presentation)

絶滅リスクの空間分布を評価する:アフリカ―ユーラシアフライウェイの水鳥への適用

*天野達也 (Univ. Cambridge), Tamás Székely (Univ. Bath), William J. Sutherland (Univ. Cambridge)

生物多様性の効率的な保全を行うためには、生物の絶滅リスクが高い地域を特定することが重要である。これまでの研究では主に、絶滅危惧種の多い地域を特定する取組みが行われてきた。このように種を単位とした評価では、各種の分布域内での絶滅リスクの空間的ばらつきは通常無視される。しかしながら、生物にとって脅威となる要因はしばしば種の分布域よりも小さな空間スケールで作用しており、各種の分布域内での個体数減少パターンを明らかにすることができれば、その駆動要因の特定や、より詳細な優先保全地域の抽出が可能となるであろう。

本研究では、International Waterbird Census(IWC)のデータを利用することによって、水鳥各種における絶滅リスクの空間分布を全球スケールで評価することを目的とする。IWCは、1967年から全世界の25,000以上の調査地で約700種の水鳥を対象として行われている個体数調査である。本発表では、この研究の第一段階としてアフリカ-ユーラシアフライウェイのデータを用いて、個体数減少の空間分布パターンを種ごとに評価した取組みを紹介する。個体数の時空間変動は、階層モデルを用いて定量化した。1度×1度のセルを評価の最小単位とし、同一セルに含まれる調査サイトは同じ個体数変化を示すと前提した。各サイトでの観測個体数の期待値は、サイト効果、分布全域で共通の年効果、各セルに特有な年効果、空間自己相関項の合計で表した。このモデルを各種の観測データに適用することで、各セルにおける個体数変化を定量化し、地図化を行った。


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