| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-008 (Poster presentation)

富士山高山帯における蘚苔類の分布

*丸尾文乃(総研大・極域),増澤武弘(静大・理),伊村智(総研大・極地研)

蘚苔類は変水性であること、有性生殖と無性生殖を頻繁に行うことなどの特性をもっているため、被子植物や裸子植物などが生育できない極域や高山地域などでも生育することができる。そのため、蘚苔類は高山帯植生の重要な構成要素となっている。本研究では、日本の最高峰であり日本有数の広い高山帯を有する富士山の高山帯に生育する蘚苔類の植物相を把握することを目的として調査を実施した。富士山の富士宮ルート(静岡県側)の標高約2600m以上の斜面において標高200mごと、および山頂付近においてサンプリングを行い、46点の標本を得た。この結果、8科12属18種(未同定含め)が確認された。ギンゴケのように山頂付近に特異的に出現する種がいくつか確認された一方で、ヤマコスギゴケ、ハリスギゴケのようにどの標高にも広範に確認される種もあった。出現種数は標高が上がるにつれ減少していくが、一転して山頂付近で最高値を示した。富士山の斜面はほとんどがスコリアで覆われ、ところどころに岩場が点在するが、岩場が蘚苔類の主な生育地となっている。富士山山頂付近で出現種数が多いのは、比較的安定していると考えられる岩場が多いためであると考えられる。岩場が多いということは蘚苔類の生育可能な環境が多様であると思われる。また、山頂付近に存在していると報告されている永久凍土からの水分の供給があるため、山頂付近は水分環境が良いと考えられる。このため、山頂付近は斜面に比べ蘚苔類の生育に適した環境であり、出現種数が多いのだろう。

また、蘚苔類の生殖に着目し、富士山の各標高ごとの有性生殖器官の発現と胞子体の有無を調べた。


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