| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-043 (Poster presentation)

山地帯における常緑広葉樹ソヨゴの光合成活性の季節変化

*木村一也,丸田恵美子,山崎淳也(東邦大・理),中野隆志(山梨県環境科学研究所)

常緑広葉樹の多くは冬季の強光・低温・乾燥ストレスによって冷温帯への分布が制限されているといわれている。しかし、主に暖温帯に生育しているソヨゴの一部は、1,000 m以上の山地帯におけるアカマツ林などの林床で落葉広葉樹と混交して生育している。寒冷地では冬季のストレスのため光合成を行えず、また、落葉広葉樹林の林床に生育する常緑広葉樹は被陰のため夏季に光合成を行えないといわれている。そのため、寒冷地の常緑広葉樹は光合成を行える時期が非常に限られることが予測される。そこで、ソヨゴが冬季の山地帯においてどの程度のストレスをうけ、またどの程度の光合成を行っているのかを明らかにすることを目的とした。富士山北麓の山梨県環境科学研究所(標高1020 m)内のアカマツ林を調査地とし、光強度の異なる林縁と林床に生育するソヨゴの光合成速度と光化学系Ⅱ活性(Fv/Fm)、色素含有量を測定した。

林縁・林床ともに、秋季のFv/Fmは低下していたものの、光合成は十分に行っていた。一定の温度下でサンプル保存後にFv/Fmの値が回復していたことから、この低下は光阻害というよりも、主としてキサントフィルサイクル色素による熱放散に伴うダウンレギュレーションを行っていたためと考えられる。冬季は、林縁・林床ともに光合成を行っていなかった。林縁では光阻害により多少のタンパク質の分解が起こっているのに対し、林床では熱放散や系Ⅱ複合体のリン酸化によって光量子の吸収を抑制していたため、ダメージを回避していたものと考えられる。また、林床において夏季は落葉広葉樹による被陰のため光合成を十分に行っていなかったことより、光合成を行える時期が極端に制限されていることがわかる。従って、熱放散や系Ⅱ複合体のリン酸化をすることで、早春に気温が安定した時即座に回復し、光合成時期を確保していることが考えられる。


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