| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-046 (Poster presentation)

アオキのテーブル型樹形の形成様式 ~シュートのサイズ・空間配置に基づく解析~

*片野 高志(茨城大・理),山村 靖夫(茨城大・理)

樹木は単純なモジュール構造を積み重ねることによって、その地上部を成長させていく。 多くの高木種は成長に伴い樹高やバイオマスを大きく増加させていくが、 森林下層に生育する耐陰性の低木種はしばしば異なる成長様式を持ち、弱光条件下で光を効率よく獲得するための樹形を示す。アオキ(Aucuba japonica)は温帯に生育する典型的な林内低木の一つであり、平坦な樹冠を持つテーブル型の樹形を示すことが多い。枝に残る芽鱗痕から各部の齢を調べることが可能である。本研究は茨城県常陸大宮市の1年を通して暗い光条件の常緑針葉樹林と、秋から春にかけて明るい光条件を経験する落葉広葉樹林の2つの調査地に生育するアオキの各年枝の長さ、水平からの角度、伸長方向を測定することによって、幹、枝の3次元構造を再現し、その樹形形成の様式・機構の解析を行った。

常緑樹林、落葉樹林の両方において、アオキの樹冠の外側に向かう枝は内側に向かう枝よりも有意に長く、水平からの角度は有意に小さいという結果を示した。また、母枝から出た対生枝のうち、長い方の枝の水平からの角度が小さい傾向にあった。アオキは水平方向外側の空間獲得へより多くのコストを回し、さらに少ないコストで内側の空間を埋めつつ葉をつける枝の高さの差を小さくすることで、横に広がったテーブル型樹形を形成していると考えられる。また、枝長が短い個体は分枝率も低く、各枝の高さの分散は枝長が長い個体よりも小さかった。このことから、光合成産物が少ない条件でより平坦な樹形を持つことが示唆された。


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