| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-056 (Poster presentation)

異なるリン可給性の熱帯林における優占樹木の実生成長速度と個体レベルの資源(光、リン、窒素)利用効率

青柳亮太(京大・農)*, 北山兼弘(京大・農)

東南アジア熱帯林で優占するフタバガキ科の樹木では、光の利用戦略が多様化しており、耐陰性や成長速度が同所的に共存する種間で大きく異なることが知られている。一方で、リン・窒素といったミネラルの利用戦略が、土壌の可給性の変化と共にどう変化するのか、ほとんど分かっていない。しかし、フタバガキ科の多くの種が土壌タイプに特異性を示すことが経験的に分かっており、フタバガキのミネラルの利用戦略は、それらの可給性の変化と共に動的に変化すると考えられる。そこで本研究では、リン可給性の異なる森林で優占するフタバガキを対象に、成長に対する資源利用戦略(生産効率、吸収効率)について調査を行った。

リン可給性の大きく異なる2つの森林(富栄養、タワウ国立公園;リン欠乏、デラマコット森林保護区、マレーシア、サバ州)で、ギャップ/林冠下のフタバガキ実生を対象に調査を行った。2011年10月から半年毎に1年間センサスを行い、相対成長速度を調べた。また、実生の掘り取りを行い、葉・茎・根のリン・窒素濃度を測定した。そこから、個体レベルの生産効率(バイオマス増加速度/葉のリン・窒素量)と吸収効率(リン・窒素同化速度/根バイオマス)を計算した。

富栄養の森林で優占する種は、リン欠乏の森林に比べて、相対成長速度が高かった。葉のリン濃度は、リン欠乏の森林ではギャップ下で低下したが、富栄養の森林では高まった。葉の窒素濃度は、両森林共にギャップ下で高まった。また、同じ成長速度の場合、リン・窒素の生産効率は富栄養の森林で高い一方、吸収効率はリン欠乏の森林で高かった。富栄養の森林では、葉の栄養塩濃度、生産効率が上昇することで高い成長速度を示すと考えられた。一方、リン欠乏の森林では、吸収効率が高まることによってリン欠乏による成長速度の低下を防いでいることが示唆された。


日本生態学会