| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-059 (Poster presentation)

熱画像と茎熱収支法を用いたクズ(Pueraria lobata)のラメット間の水移動の定量化

*神山 拓也,田中 隆文,山内 章(名大・農)

ラメットが連結しているクローナル植物は、ラメット間で水分を相互分配することが知られているが、非破壊的にその量を測定した報告は少ない。これまで、茎中の水流量を定量的に評価するためには、茎熱収支法が用いられてきた。そして、私達は、茎熱収支法を応用し、熱画像によって茎の中の水移動を視覚的に捉え、その画像解析により蒸散流量を定量化できることを明らかにしてきた。本研究では、この手法を用いて非破壊的かつ定量的に生理的統合による水流量を測定し、その水による生理機能向上効果を調べることを目的とした。ポットを用いて6対(12個体)を生育させ、ラメットの連結した区としていない区を3対ずつ設け、両区とも片方のポットの土壌を乾燥させた。そして、ラメット間の水移動量を上記の手法により視覚化、定量化し、その水による生理機能向上効果を水消費量、葉身水ポテンシャル(Ψ)、気孔コンダクタンス(gs)、蒸散速度(Tr)、光合成速度(Pn)を計測することにより調べた。片方の土壌が乾燥していくにつれ、ラメットの連結した区の湿潤条件下のラメット(湿潤ラメット)から乾燥条件下のラメット(乾燥ラメット)へと水流量が0から3 mg s-1まで増加していき、その様子を視覚化することに成功した。また、ラメットの連結した区の湿潤ラメットの水消費量は、連結していない区のラメットの値に比べて2倍以上大きかった。さらに、ラメットの連結していない区の乾燥ラメットのΨ、gs、Tr、Pnは、両区の湿潤ラメットの値に比べ著しく低下したのに対し、連結した区の乾燥ラメットは、それらと同程度の値を示した。以上より、片方の土壌が乾燥していくにつれ、ラメットの連結した区の湿潤ラメットから乾燥ラメットへの水流量が増加し、その水によって、その乾燥ラメットの生理機能が向上することが明らかとなった。


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