| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-066 (Poster presentation)

風媒草本ブタクサの開花時期と草丈にかかる選択圧

*中原 亨, 深野祐也(九大・シス生), 矢原徹一(九大・理)

動物媒の花では、媒介者を通じた花形質への自然選択がさかんに研究されているが、風媒花の形質にかかる自然選択の研究はほとんどない。本研究では、風媒花・雄性先熟・自家不和合性一年草ブタクサAmbrosia artemisiifoliaを材料として、形態形質とフェノロジー形質にかかる選択圧の測定を試みる。本発表では、種子生産(メス適応度)の測定結果にもとづいて、「雌花開花日が遅い方が(繁殖開始サイズを大きくする点で)種子生産が大きい」「開花開始日のサイズが大きい(草丈が高く草幅が広い)ほうが種子生産が大きい」という2つの仮説を検証する。我々は、実験集団として圃場にブタクサの鉢植えを等間隔に並べて栽培し、7~10月の間に形態形質(草丈・草幅・茎の直径・最大葉の長さ)と、フェノロジー形質(花芽形成日・雄花開花日・雌花開花日)を測定した。開花期終了後は種子を回収し、各個体で生産された種子の総重量と個数を記録した。さらに、測定した各形質値を説明変数、種子重量や種子数を応答変数とし、GLMを用いて選択勾配分析を行った。解析の結果、雄花開花日・雌花開花日はメス適応度に有意に影響しており、開花日が遅いほど種子生産が減少するという方向性選択が見られた。一方で、背丈・草幅などの形態形質は種子生産に影響していなかった。また、種子生産と、開花時の草丈・草幅の間には相関はなかった。これらの結果から、上記の2つの仮説は支持されなかった。今後は父系解析を行い、「オス適応度の点では雄花開花日は早い方が適応的である」「オス適応度の点では草丈が高く草幅が狭いほうが適応的である」という仮説を検証する。


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