| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-070 (Poster presentation)

シロダモにおける成熟雌雄の分布と稚樹の出現密度

*秋保開祉(新潟大・農),紙谷智彦(新潟大院・自然科学)

シロダモ(Neolitsea sericea)は雌雄異株の植物で、虫媒花粉が雄株から雌株への一方向であり、雌株のみが種子散布に寄与する常緑高木である。これまで、雌株は雄株からの距離が概ね30m以内で効率良く果実生産を行い、パッチ状群落を形成することが明らかになっている(Arai & Kamitani 2005)。本研究は、シロダモが生育域を拡大する過程で、成熟雌雄の位置が稚樹密度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

調査地は新潟市の砂丘上に造成されたクロマツ海岸林で、西端が角田山の自然林に接しており、シロダモは鳥散布によって海岸林へ侵入し生育域を拡大している。そこで、角田山から1.3、2.7、3.7、5.1、8.6kmの5地点に10m×125mの稚樹調査区を設置し、5m×5mの調査枠に区切った。各調査枠に出現したシロダモは樹高および、樹高が2m以上の個体の胸高周囲長を測定した。また、稚樹調査区を含む30m×145mの成熟個体調査区を設置し、開花期に成熟雌雄を判別し位置を記録した。雌株については果実数をカウントした。

その結果、林分単位で雌株数と積算果実数の間に有意な相関があった。また、雌株数が増加すると稚樹密度は指数関数的に明瞭に増加した。一方で、雌株の果実数はサイズ(胸高周囲長・樹高)との相関が無く、十分な成熟サイズに達しているにも関わらず、果実が無いまたは少ない雌株があった。そのような個体の近くには、しばしば雄株が無かったことから、成熟した雌株の果実数は成熟した雄株からの距離が制限要因になっていると考えられた。

以上の結果から、林分レベルにおいてシロダモの稚樹密度は成熟雌株本数から推定が可能であるが、果実生産は雄株からの距離による制限を受けるために、成熟雌株のサイズには依存しないことも明らかになった。


日本生態学会