| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-075 (Poster presentation)

開放型チャンバーによる温暖化実験がコナラ樹冠上部における種子の発達に与える影響

*中村こずえ(鳥取大・院・農),佐野淳之(鳥取大・農・森林生態系管理)

今日、地球温暖化が深刻化しており、温度上昇に対する生態系の応答を明らかにする研究が求められているが、温度上昇と種子生産の関係についての研究はほとんどない。これらの関係を明らかにすることは、地球温暖化が樹木の更新に与える影響と種子を利用する捕食者への影響を考えるうえで重要である。とくに種子サイズは、種子と種子食者の関係において、また種子の更新初期段階において重要であり、種子サイズは環境要因に影響を受けるといわれている。そして、樹木の樹冠上部では、光合成や蒸散が活発に行なわれるとともに、開花、結実、種子散布などの繁殖活動が行われている。そこで本研究では、樹冠部分での種子生産に着目し、温度上昇と種子生産の関係を明らかにすることを目的とする。

林冠観測用ジャングルジム内のコナラ3個体の樹冠に、温暖化を想定したOpen Top Canopy Chamber(以下OTCCと記述)をそれぞれ1基ずつ設置して実験を行った。OTCC内とOTCC外(以下controlと記述)のシュートに着生していた種子の長さと幅を2週間ごとに計測した。また、それぞれの樹冠直下に設置したシードトラップを用いて落下種子を定期的に回収し、サイズを測定した。

着生種子の長さは、種子が急速に成長する8月においてOTCCでcontrolより有意に大きかった。また、コナラ3個体のうち虫害率が高かったコナラでは落下した虫害種子の長さと幅がOTCCでcontrolより有意に大きかった。これらのことは、温度上昇によって発達中の種子の成長速度が速くなり、サイズが大きくなることによって、虫害を受けても発芽能力を失わない種子が増え、コナラの更新に有利に働くことを示唆している。


日本生態学会