| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-086 (Poster presentation)

非撹乱型複合萌芽戦略-アカガシにおける成長に伴う萌芽機能の変化-

*瓜生真也(横国大・院・環境情報), 武生雅明(東農大・地域環境),磯谷達宏(国士舘大・地理) 吉田圭一郎(横国大・教育), 酒井暁子(横国大・環境情報)

樹木における萌芽には様々な適応的意義がある。各個体は成長段階や環境条件に応じて適切な萌芽生産を行うことにより、最適な株構造を維持していると考えられる。本研究では暖温帯極相種アカガシ Quercus acuta を対象に、環境や成長に伴う萌芽機能の変化を解明することを試みた。

静岡県函南原生林にて、常緑樹優占林分(600m)、夏緑樹優占林分(800m)、移行林分(700m)の3林分に各1haの調査区を設置した。調査区内のアカガシについて主幹の胸高直径(DBH)と各萌芽の基部周囲長を測定した。主幹DBHおよび標準繁殖開始サイズに基づき、生活史段階を若木(DBH < 25cm)と成木(≥ 25cm)に区分し、2005年から2012年の主幹DBHにおける相対成長速度と成長量を求めた。

アカガシの萌芽は個体の損傷とは無関係に生産されていた。 若木は主幹断面積に対して様々な相対サイズの萌芽幹を生産していたのに対し、成木では主幹よりも明らかに小さな萌芽幹を持つ株構造であった。 主幹の成長量は、若木では萌芽個体よりも未萌芽個体のほうが高かったが、繁殖開始サイズに到達すると萌芽・未萌芽個体で差がなくなった。標高の上昇に従い、相対成長速度は増加する一方、800m調査区での繁殖個体率および成木萌芽個体率は、600m、700m調査区よりも低かった。若木段階での萌芽は閉鎖林冠下での生産力の確保や生存率を高めるために機能し、成木段階での萌芽は生息適地における後継稚樹の維持に貢献すると考えられる。


日本生態学会