| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-102 (Poster presentation)

モンゴル草原における時空間的に異質な植生資源の衛星画像を用いた定量化

*柿沼薫, 岡安智生(東大院・農), 宮坂隆文(慶大・政メ),ジャムスランウンダルマー(モンゴル農大), 大黒俊哉, 武内和彦(東大院・農)

乾燥地では降雨と地形によって創出された植生資源の空間的異質性が、家畜にとって干ばつ時のバッファーとして働くため、その定量化は管理上重要である。本研究では、群落タイプを考慮して二時期(平年と干ばつ年)の衛星画像解析を実施することで、資源植生の時空間的異質性を評価する。

調査対象地はモンゴルのマンダルゴビとした。18km×18kmの調査地を設定し、調査地内を1kmごとに区切った交点でコドラート(20m×20m)を設置し出現種および被度を記録した。得られた植生データを用いて、クラスター分析によるグループ化および指標種分析を用いて各グループの指標種を特定した。ALOS画像(2010年7月31日撮影)を利用し、オブジェクト指向分類により分割し、NDVI値に基づいて、クラスター分析により得られた群落タイプに分類した。また干ばつ年にあたる2009年の画像と平年並の2010年の二次期を比較して、降雨に対する各群落の応答をNDVI値の差分により評価した。

現地調査の結果、植生は主に4つに区分され、それぞれの群落タイプは (1)Caragana群落(マメ科低木) (2) Allium群落(双子葉草本)(3) Achnahterum(イネ科叢生草本) (4) Reaumuria(塩性低木)となった。衛星画像解析の結果、調査地の70% をAllium群落が占め、残りの3つの群落は占める面積が小さかった。また、干ばつ年と平年の2時期の植生量を比較したところ、どの群落も干ばつ時に植生量が減少したが、谷筋に出現するAchnahterum群落は比較的多い植生量を占め、干ばつ時に利用可能な貴重な資源であることが示唆された。本研究により、群落タイプを考慮した資源の空間的異質性の評価の重要性が示された。


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