| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-106 (Poster presentation)

徳島県の竹林はどこまで拡大するか?

*竹村紫苑,荒井祐作,鎌田磨人(徳島大・工)

近年、各地で急速に竹林の分布拡大が進んでいる。竹林の拡大は、生物多様性の低下や里山景観の劣化を引き起こす原因となり、早急な竹林管理が必要になっている。そこで本研究では、徳島県全域を対象地として竹林が拡大する場所を定量的に予測し、優先的に竹林管理を行うべき場所を広域的な視点から選定するための手法を検討した。

竹林の拡大可能域の推定には次の環境要因を用いた。年間降水量、最深積雪量、年平均気温、氷点下月累計、表層地質、斜面傾斜角、斜面方位、TPI:地形単位を示す指標、母体からの距離である。そして、1970年代と2000年代の2カ年の空中写真から竹林の分布域を判読し、30年間で竹林が拡大した領域を抽出し応答変数とした。竹林拡大予想モデルはMaxEntを用いて構築した。それぞれの環境要因は単独でモデルを構築した後に、その中で説明力の高かった環境要因を用いて最終モデルを決定した。最後に、得られた竹林拡大モデルを用いて徳島県における2030年、2060年、2090年の竹林拡大予測図を作成した。

その結果、氷点下になる月が少なく、竹林の母体からの距離が近い、堆積岩類の場所でかつ開けた斜面・尾根の中腹・浅い谷の地形において、竹林が拡大しやすいことが明らかとなった。モデルの適合性を示すAUCは0.974であり、十分な精度のモデルを得ることができた。

竹林拡大予測図から、徳島県は山地部の低温な気候帯や急峻な場所を除き、潜在的に竹林が拡大しやすい場所であり、2090年には現在の2倍以上に竹林が拡大することが示された。中でも太平洋側の小松島市、鳴門市、美波町、徳島市、阿南市において特に竹林の急速な拡大が予想され、これらの地域は優先的な竹林管理が必要となる場所である。このように竹林拡大モデルの構築は優先的に竹林管理を行うべき地域の選定に有効なツールとなる。


日本生態学会