| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-115 (Poster presentation)

モンゴルの放牧地に生育する低木Caraganaの遺伝的多様性とクローン構造

*高橋昌也(東北大・農),吉原佑(東北大・農),陶山佳久(東北大・農)

家畜の過度な放牧は、しばしば植生の劣化を招くことが問題となる。モンゴルの半乾燥地域を中心に生育するクローナル植物のCaragana microphylla(マメ科:以下カラガナ)は、この地域においてしばしばパッチ状の群落を形成する代表的な低木である。その生育は放牧圧の影響を強く受け、重牧地では成長が抑制されることが知られている。このような成長抑制が繁殖成功にまで影響を及ぼすならば、長期的にはこの種の遺伝的劣化を招く可能性が危惧される。そこで本研究では、放牧圧が摂食対象植物に及ぼす遺伝的影響について基礎的な調査を行うこととし、軽牧地および重牧地におけるカラガナパッチのクローン構造および遺伝的多様性を調べた。

調査地は、ウランバートルから南へ約100km離れた草原地帯とした。井戸に隣接し、家畜密度が高い場所を重牧地、井戸から離れて家畜密度が低い場所を軽牧地とした。軽牧地と重牧地にそれぞれ3つの調査地を設け、1つの調査地につきそれぞれ4パッチのカラガナ群落を調査対象とした。1つのパッチからは異なる8方向の辺縁部から計8サンプルの葉片を採取した。各パッチの直径は0.8–5.0 m、パッチ間の距離は0.5 –5m、調査地間の距離は500–1000m、軽牧地と重牧地の間の距離は約3kmである。

本研究で開発したマイクロサテライトDNAマーカーを用いて、まずパッチのクローン構成を調べた。その結果、調査した計24パッチのうち、21パッチが1クローンのみで構成されており、残りの3パッチは近接するパッチのクローンが入り込んだ2あるいは3クローンで構成されていた。 また、近接した2パッチが1つのクローンで構成されているケースも4組あった。これらの構造や多様性には 、軽牧地と重牧地の間で顕著な違いは認められなかった。


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