| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-118 (Poster presentation)

開放型チャンバーによる温度上昇がコナラ(Quercus serrata Thunb.)に与える影響 ~樹冠における葉の被食とシュート成長様式の2年間の比較~

*三島大(鳥取大・院・農),佐野淳之(鳥取大・農・森林生態系管理)

地球温暖化が進行し、生態系や樹木に与える影響が懸念されており様々な研究が行われている。温暖化による影響は未知な部分が多く、新たな知見を得るためには温度上昇に対する生態系の応答を確かめる野外操作実験が重要である。そこで本研究では、コナラ林内に設置された林冠観測用ジャングルジムで開放型チャンバー(Open Top Canopy Chamber)を用いて2年間の温暖化実験を行い、温暖化がコナラの葉やシュートに与える影響を調べ、温暖化に対する成長器官の対応様式を明らかにすることを目的とした。

高さ約18 mに位置する樹冠の枝を囲むようにOTCCを設置した。OTCC内の温度上昇は、2011年で約0.1~0.7℃、2012年で約0.1~0.9℃であった。IPCC(2007)は今後約0.2℃上昇すると予測しており、本結果は今後の温度上昇を表していると考えられる。

2011年にはすべてのOTCC内で三次伸長枝が確認されたが、controlでは三次伸長枝は確認されず二次伸長枝までであった。OTCC内では、シュート長と基部直径、葉面積がcontrolに比べて増加した。一次伸長枝の食害度はcontrolの方が高く、二次伸長枝の食害度はOTCCの方で高かった。

2012年には三次伸長枝は発生せず、2011年に比べ、シュート長や葉面積は減少傾向を示したが、基部直径が増加した。2012年の雌花数と堅果数が、2011年より多かった。したがって豊作年では資源を成長より繁殖に投資すると考えられる。

これらより、温暖化はコナラの伸長成長を促進させ、コナラはより明るい空間を獲得し、得た資源を繁殖に利用しているといえる。そのため温暖化の進行によって、コナラは残しやすくなる可能性があると考えられる。


日本生態学会