| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-124 (Poster presentation)

DNAバーコーディング法を用いたネズミ科3種の糞中植物残渣の推定

*白子智康,石澤祐介(中部大院・応用生物)川本宏和,田崎里実,上野薫,南基泰(中部大・応用生物)

日本全域に広く分布する代表的な小型哺乳類であるアカネズミ(Apodemus speciosus)、ヒメネズミ(A.argenteus)、ヤチネズミ(Eothenomys andersoni)は生態系ピラミッドの最下層に位置し、国内に生息する動物種の生物多様性維持において重要な存在である。これら3種の餌資源推定は、これまで顕微鏡を用いた胃内容物もしくは糞中残渣の気孔や表皮細胞の観察による種同定によって行われてきた。しかし、この方法では粉砕・消化によって形状が変化しているため餌資源の種同定は困難であり経験則が必要となることから、日本におけるネズミ類の餌資源の種同定には至っていない。また,胃内容物を調べるためには調査個体を殺傷する必要もある。

そこで本研究では経験則を必要とせず調査個体を殺傷しない、確実なネズミ類の餌資源同定法としてDNAバーコーディング法を利用した糞中植物残渣推定法の開発を目的とした。国内各地でネズミ科3種の捕獲調査により糞を採取し,植物残渣のDNAを抽出、rbcL遺伝子領域を決定後BLAST検索し、餌資源を推定した。解析の結果、アカネズミからソヨゴ(Ilex pedunculosa:相同性98%)、ヒメネズミからアセビ(Pieris japonica:99%)、ヤチネズミからクマイチゴ(Rubus crataegifolius:99%)、3種からセイヨウバクチノキ(Prunus laurocerasus:98%)等が推定された。さらに、BLAST検索によって推定された植物種のrbcL遺伝子領域の多くは、捕獲地点周辺に自生している植物種と一致していた。このことからDNAバーコーディング法による餌資源の推定は実用性の高い手法であるといえる。


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