| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-145 (Poster presentation)

鳥類のフンと含有種子双方の遺伝解析による果実食鳥の種子散布パターン解析

*山崎良啓(京大院農), 直江将司(東大院農), 正木隆(森林総研), 井鷺裕司(京大院農)

鳥散布種子の散布パターンは、遺伝解析による種子や実生の母樹推定により再現することができる。しかし、従来の遺伝解析手法では、解析サンプルの種子散布鳥を特定することは困難であった。そこで、鳥類のフンとフン含有種子の遺伝解析により種子の散布鳥と散布距離を同時に解明する手法を確立し、種子散布距離の散布鳥による違いを明らかにすることを研究の目的とした。

調査は2011年8-11月に小川学術参考林(茨城県)でミズキ果実とそれを利用する果実食鳥を対象に行った。結実木下にビニールシートを設置しサンプル回収し、鳥類のフン(49サンプル)とそれに含有されるミズキ種子(44種子)について遺伝解析した。種子散布鳥の特定のため、DNAバーコーディング領域であるmtDNA CO1領域のシーケンスを行いデータベースと照合した。種子散布距離の推定のため、SSRマーカー6座を用いて遺伝子型を決定し結実木の遺伝子型と比較した。

フンサンプルは、35サンプル(71 %)でシーケンス配列を得ることに成功し、7分類群の果実食鳥類を特定できた。特定できた分類群は、ツグミ属sp1(シロハラ、マミチャジナイ)、ツグミ属sp2(ツグミ、クロツグミ)、アオバト、キビタキ、アオゲラ、ヤマガラ、イカルであり、結実木への訪問の直接観察と良く一致した種構成であった。含有ミズキ種子は、43種子(98 %)で遺伝子型を特定でき散布距離を推定することができた。以上より遺伝解析による散布者と散布距離の同時推定は種子散布研究において有効な手法であるといえる。しかし、多くの含有種子の散布距離は非常に短く、散布者間での散布距離の有意な違いは検出されなかった。散布者間の違いをより詳細に解析するためには、解析サンプル数の増加や同種成木から離れた地点でのサンプリングが必要であると考えられる。


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