| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-163 (Poster presentation)

魚類の量的形質の遺伝的基盤:フナ類の体高に着目して

*児玉紗希江 (放送大/水研セ), 箱山 洋 (水研セ/海洋大) , 松本忠夫 (放送大)

魚類のプロポーションは遊泳能力と対捕食者防御に影響する。流線型であれば遊泳能力が高くなる一方で、捕食者の口の大きさよりも体高が高いと食べられにくくなる。予測できない変動環境では形質の可塑性が進化しやすいことから、遺伝的に同一でも捕食圧などの環境やコンディションによって体高形質が可塑的に変化する可能性がある。餌条件が悪い場合には、対捕食者よりも採餌の効率を高める遊泳能力を優先するかもしれない。そこで本研究では、無性生殖個体が存在するフナ類( Carassius auratus)に着目し、野外調査および室内実験から、体高形質の遺伝的基盤および環境(密度)に対する可塑性を調べた。無性型フナは三倍体の全メスであり、その子供は全て親のクローンであるため、同一の親魚から生まれた姉妹間の形質変異はすべて環境分散である。まず、13地域の野生個体群のデータを用いて、無性型フナの体長と体高について調べた。体長と体高の関係は直線的であり、体長によらずフナの体型はある程度相似的であった。体高-体長比の平均と分散は地域間で有意に異なり、地域の環境条件の違いや集団内の遺伝的変異の大きさの違いを反映していると考えられる。次に、6地域の親からそれぞれ遺伝的に同一な6系統の子供たちを作出し、環境(飼育密度:高/低)および系統が、体高-体長比に与える影響を実験的に調べた。二元配置の分散分析の結果、体高-体長比の平均値は系統間で有意に異なり、低密度のほうが高密度よりも体高-体長比が大きかった。結論として、野外の地域個体群間で見られる体高-体長比の表現型に見られる変異は、遺伝と環境の両方に影響を受けて決定されている。実験では密度(餌条件)によって、体高-体長比が可塑的に変化することが示された。


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