| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-189 (Poster presentation)

ハバチ上科の種多様性

*井坂友一(信州大・院・総工),佐藤利幸(信州大・理・生物)

膜翅目は地上で最も繁栄したグループのひとつである.膜翅目は広腰亜目と細腰亜目に分けられ,前者は約8500種が記載されている.広腰亜目の中でもハバチ上科は最も種数が豊富で,科ごと種数や主とする食相に違いがある.ハバチ上科は,ヨフシハバチ科(13種,シダ植物食),ミフシハバチ科(913種,被子植物食),Pergidae(442種,被子植物食),マツハバチ科(140種,裸子植物食),コンボウハバチ科(205種,被子植物食),ハバチ科(5721種,被子植物食など)の6科からなっている.広腰亜目は,膜翅目の系統進化を述べる上で重要な基部的位置であるにも関わらず,細腰亜目に比べ系統学的研究が遅れている.さらにハバチ上科は広腰亜目の中でも最も多様である.そのハバチ上科内の科間関係を示したこれまでの形態系統樹と分子系統樹の間には相違があり,また一部科間関係が支持されているものの不明瞭な部分が多い.

本研究では先行研究にデータを追加し系統樹を再構築した結果,先行研究で示された分子系統樹の科間関係を支持する系統樹が得られた.さらにハバチ上科の6科の種多様性に影響を与える要因を明らかにするため,得られた分子系統樹に基づき姉妹群比較法により系統ごと種数の比較を行った.その結果,ヨフシハバチ科とマツハバチ科で有意に種数が少なく,その要因は食相であることが示唆された.食相との関係が示唆されたため,ハバチ上科の6科それぞれの出現時期を推定し,それらと科ごとの主な食相の出現時期を比較した.その結果,ミフシハバチ科,Pergidae,コンボウハバチ科の分岐年代は食相となる被子植物の出現時期と合致したため,食相と関係を持ち分化した可能性が,一方でヨフシハバチ科,マツハバチ科,ハバチ科の分岐年代は食相となる植物の出現時期と合致しなかったため,食相以外の要因が分化に影響した可能性が示唆された.


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