| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-197 (Poster presentation)

チベット高原南部域を中心としたMeconopsis horridulaの遺伝的多様性

*梅本奈美,森高子(中部大・応用生物),村上哲生(名古屋女子大・家政学部),王君波,朱立平(中国科学院・青蔵高原研究所),松中哲也,西村弥亜(東海大学・海洋学部),南基泰(中部大・応用生物)

高山植物は、過去に繰り返された間氷期と氷期に応じて、その分布は大きく変化してきたと推測されている。ヨーロッパアルプスの高山植物は、葉緑体DNA多型解析によって氷期においても氷床に覆われなかった山頂や岩峰などをレフュージアとして、後氷期にそこから分布を再拡大したと考えられている。しかし、未だチベット高原の高山植物の分布変遷についての詳細な報告はされていない。そこで、チベット高原南部域のM.horridula(ケシ科メコノプシス属)の系統地理学的解析を行うことにより、チベット高原南部域の本種の分布変遷を推測した。

チベット南部域においてM.horridula 22集団134検体と、アウトグループとしてM.racemosa 2検体を供試試料とした。葉緑体DNA非コーディング領域(34領域)についてPCRを行い、ダイレクトシーケンス法によりDNA多型検出を試みた結果、rps16のイントロン領域)においてDNA多型が検出できたので、最尤系統樹及びハプロタイプ・ネットワークの構築を行った。その結果、9ハプロタイプを検出でき、最尤系統樹で3つのクレードが確認できた。その内、分岐年代の古いハプロタイプは東部集団で確認され、分岐年代の新しいハプロタイプは西部(特に南西部)で多く確認できた。このことから、東部集団の起源が西部、南西部より古いことが示唆された。また、今回は限られた地域、サンプル数であったが、遺伝的多様性の高い地域が三ヶ所確認され、いずれも標高5000m付近の比較的湿潤な氷河周辺もしくは湖、河川周辺であった。


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