| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-201 (Poster presentation)

奄美大島における陸生大型ミミズ類の生態と多様性

*山根美子,加藤真(京大院・人環)

野外環境において、陸生大型ミミズ類は土壌の摂食・排糞によって生物的・物理的・化学的な作用を土壌生態系に与えている他、それ自身が昆虫類や鳥類、爬虫類、哺乳類などの重要な餌資源としての役割も担っている。陸生大型ミミズ類は土壌生態系を構成する極めて重要な要素であり、生態系全体を考える上でミミズの機能や多様性の理解は不可欠である。一方で同定に用いることのできる形質の少なさや形態の可塑性はしばしば分類における混乱を招き、とりわけ日本を含む東アジアに優占しているフトミミズ科では顕著である。こうした問題は形態観察とDNAバーコーディングを併用することである程度解消できると考えられる。

陸生大型ミミズ類の日本列島全体における多様性や分布の解明は未だ不十分な状態にあるため、本研究では国内の亜熱帯域のミミズ相を探る一端として奄美大島を対象に調査を行なった。奄美大島笠利の森林内において2012年4月から10月にかけて一月おきにコドラート調査を行なった。同時に奄美大島および加計呂間島の計20地点で陸生大型ミミズ類を採集した。採集した各個体について双眼実体顕微鏡による形態観察とミトコンドリアDNAのCOI領域を利用したDNAバーコーディングを行なった。

結果、フトミミズ科18種、ジュズイミミズ科2種を得、このほとんどが未記載種であると考えられた。温帯域における先行研究ではフトミミズ科の腸盲嚢の形状と生活型の間に対応が見られるとしている。しかし今回の調査で得られた個体の腸盲嚢はいずれも突起状であり、リター下から採取された個体に関しても表層種に対応する指状の腸盲嚢を持つものは観察されなかった。ジュズイミミズ科はこれまで台湾で記録があるものの、国内では九州以南における記録は無い。今回の報告は南西諸島におけるジュズイミミズ科の初記録であり、今後国内におけるジュズイミミズ科の伝播を考える上で鍵となるだろう。


日本生態学会