| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-205 (Poster presentation)

中田島砂丘におけるハビタットと昆虫相

*遠藤拓洋 明治大学大学院 応用植物生態学研究室

海浜という生息場所は、砂の移動や高温、乾燥、塩水の飛沫などにさらされる厳しい環境条件下にあり、そのような環境に適応してきた生物からなる特異な生物群集が成立している。中でも海に棲む昆虫の大部分は海岸性であり、自然海岸を好む。しかし、現在、我が国では都市化および産業化に伴う沿岸地域の開発、浸食に伴い、自然海岸が依然として減少傾向にある。こうした海岸環境について近年関心が高まってきているが、残存している砂浜海岸の動植物、特に海岸性昆虫類の分布状況、生態的知見に関した報告は十分ではなく、生息調査およびデータベース化が望まれている。研究では海岸砂丘における汀線から海岸林までのハビタットごとの昆虫相の差異を明らかにし、その要因を探ることを目的とした。

研究対象地の中田島砂丘は静岡県浜松市南部に位置し、遠州灘海岸の海岸砂丘である。近年海岸侵食や飛砂環境の変化により浜崖侵食をはじめとした砂丘面積の減少、中央部の砂丘地盤の低下が問題となっている

調査は2012年8月から11月にかけて、中田島砂丘内の始点に汀線から垂直な3本のベルトトランセクトA,B,C(以下A,B,C)を設定し、ベルト上の各ハビタットにおいて、ピットフォールトラップによる定量的調査および篩、捕虫網を用いた任意調査を行った。ピットフォールトラップでは総計19種80個体うちコウチュウ目13種、カメムシ目4種、ハサミムシ目1種、アミメカゲロウ目1種が確認された。A,Bともに海岸林を除いてオオハサミムシLabidura riparia japonica、オサムシモドキCraspedonotus tibialisが多く確認できたが、Cではこの2種はほとんど見られなかった。一方でCの海岸林内ではA、Bにない種が確認できた。また、Cにおいて連続した海浜植物群落の面積が小さいことから、この2種の生息に連続した海浜植物群落が関わっていることが伺える。


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