| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-214 (Poster presentation)

異なる季節に設置した人工池における水生昆虫群集の形成過程の比較

*鈴木真裕, 平井規央, 石井 実(大阪府大院・生命・昆虫)

水生昆虫類の衰退傾向が顕著になる中で、ビオトープ池の造成や人工池の設置などによる保全策が行われるようになってきた。演者らも2011年の春に大阪府堺市の「堺自然ふれあいの森」内に人工池を設置し、水生昆虫群集の形成過程を調査したところ、春~夏に種数の増加が見られ、秋には減少に転じたことから、設置する季節の重要性が示唆された。そこで、2012年は同じ調査地内に春と夏に人工池を設置して、水生昆虫群集の形成過程を比較した。

人工池には水道水を溜めたプラスティック容器(約200 ℓ;深さ20 cm)を用い、5月下旬に6個(M池)、7月下旬に6個(J池)をそれぞれ設置した。水生昆虫のすくい採りは、目合い0.5 mmのハンドネットを用いて、各池において設置後5日目、約20日目および11月まで原則として毎月1回行なった。カゲロウ目とハエ目については、池の一部をすくい採り、その個体数を面積補正した。

調査の結果、M池では30種のべ約35,200個体(5~11月に9回調査)、J池では22種のべ約27,200個体(7~11月に6回調査)の水生昆虫が記録された。肉食者では、両池ともに設置1ヶ月後にチビゲンゴロウ幼虫とシオカラトンボが優占したが、2ヶ月以降はシオカラトンボの個体数が高く維持されたのに対して、チビゲンゴロウ幼虫はまったくみられなくなった。雑食者(植食者とデトリタス食者含む)については、フタバカゲロウ属とユスリカ亜科が優占し、両池で同様の季節的推移を示した。7~11月の期間について比較すると、大部分のコウチュウ目、カメムシ目の種の成虫では、個体数の季節的推移が両池で概ね一致していたが、コマツモムシ成虫など一部の種を除き、M池の方が個体数レベルが高かった。これらの結果より、経時的推移と季節的推移に着目して水生昆虫の群集形成について考察する。


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