| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-223 (Poster presentation)

捕食者の生態系エンジニアリングを組み込んだ捕食者―被食者動態

*西嶋翔太(東大・農),瀧本 岳(東邦大・理),宮下 直(東大・農)

生物による物理環境の改変は、生態系や生物群集の構造に大きく影響するプロセスであるが、生態系エンジニアリングを取り扱った理論研究は少ない。とりわけ、生態系エンジニアリングと栄養的相互作用の両方を扱った一般的なモデルはいまだに存在しない。

本研究では捕食者-被食者相互作用に環境動態と捕食者の生態系エンジニアリング効果を組み込んだ数理モデルを開発し、被食者動態が生態系エンジニア(捕食者)の個体群動態に与える影響を解析した。このモデルでは、捕食者の生態系エンジニアリング効果が被食者への捕食率か自身の生存率のいずれかを高めることを仮定した。また、被食者の動態はロジステック成長をする系内資源と外部から供給される系外資源の2種類を考えた。

解析の結果、中程度の生産性で代替安定状態が生じることや、被食者が系外資源で生態系エンジニアリングが捕食者の生存率を高める場合には、生態系エンジニアの密度が時間とともに増加し続けるというパターンを示すことが明らかになった。また被食者動態が遅くなると系は大きく振動したが、環境動態が遅くなることでこの振動は抑えられた。

これらの結果は、(1)生産性の増加は生態系エンジニアの突発的な増加を招くこと、(2)生態系エンジニアが増加し続けるという動態は系外資源によって引き起こされること、(3)物理環境の時間スケールが遅いという一般的な性質が生態系エンジニアの個体群動態の安定化に寄与していることを示唆している。


日本生態学会