| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-238 (Poster presentation)

ヒミズ(食虫目:モグラ科)の生活様式と天敵に対する反応性

*松山龍太,林文男’(首都大・生命)

ヒミズ Urotrichus talpoides は食虫目モグラ科の日本固有の哺乳類である.この動物は本州の森林やその周辺に生息しており,林床の腐葉土層にトンネルシステムを作って,主に昆虫類やミミズ類などを捕食している.ヒミズはトンネルシステムに依存的な生活をしているため,野外での直接行動観察が困難である.そこで本研究では,東京都西多摩郡檜原村で 2010 年 4 月から 2011 年 11 月の間に捕獲した本種 26 頭を,坑道を模した飼育容器に導入し,活動パターン,坑道や巣穴の利用様式,採食様式,さらに天敵に対する反応について観察を行った.この飼育容器は 30 × 30 × 4.5 cm の石こうで作ったもので,坑道の入口から巣穴までの距離を3段階に分け,奥の巣穴へ向かうにつれて,巣穴までの距離が長くなるように作製した.上面は透明のアクリル板で覆い,夜間に弱光の下でトンネル内の行動をビデオ撮影により記録した.ヒミズの天敵としては,フクロウ(声)とアオダイショウおよびジムグリ(実物)を用いた.天敵を呈示しない条件下では,8日間連続して夜間の録画を行った.天敵を呈示させた条件下では,飼育容器に導入して5〜8日目(後半4日間)にフクロウの鳴き声を聴かせた実験と,網袋に閉じ込めたヘビ類を坑道外に 2 時間置いた 実験を行った.ビデオ録画から,トンネルシステムの各場所における休息,活動,摂食,排泄の頻度を比較した.ヒミズは活動と休息を頻繁(一晩に平均5.1回~33.3回)に繰り返した.全観察時間中,活動していた時間の割合は15.4%~40.2%であった.巣穴の使い分けも認められた.天敵の呈示実験では,しかし,活動性や巣穴の利用様式に顕著な変化は見られなかった.


日本生態学会