| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-250 (Poster presentation)

国後島および択捉島におけるヒグマのmtDNAハプロタイプの分布および系統

*伊藤哲治(日大・生物),中村秀次(日大・生物),小林喬子(農工大・農),中下留美子(森林総研),増田泰(知床財団),Andrey Loguntsev(Nature Reserve Kurilsky),大泰司紀之(北大・博物館),佐藤喜和(日大・生物)

国後島および択捉島は、北海道の北東に位置する島々であり、各島でヒグマUrsus arctosが約300頭、約650頭 (約5~10km2当り1頭)分布すると推定されている。

北海道のヒグマには、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコントロール領域約700塩基に17のハプロタイプがあることが報告されており、分子系統的に3つのクラスターA、B、Cに分類されている(Matsuhashi et al. 1999)。クラスターAは北海道の中央部から北部に分布し、西アラスカおよびユーラシア大陸に広く分布するグループに近縁なこと、クラスターBは知床半島およびその基部にかけて分布し、東アラスカのグループに近縁なこと、またクラスターCは渡島半島から石狩平野の西部にかけて分布し、北アメリカのヒグマに比較的近縁なことが明らかになっている(Matsuhashi et al. 1999; Korsten et al. 2009)。

本研究は、国後島および択捉島のヒグマの分子系統を明らかにすることを目的とし、2009年からおこなわれている両島でのヒグマ生態調査により採集された体毛および体組織を用いて、コントロール領域約700塩基のmtDNA解析をおこなった。その結果、両島で共通のハプロタイプが1つ、択捉島ではさらに1つのハプロタイプが認められ、それらのハプロタイプはクラスターBに属していることが明らかとなった。両島のハプロタイプがクラスターBに属していたことは、両島が、知床半島と地理的に近いことに関係しており、今後、千島列島のさらに北方および樺太島のヒグマの系統の情報が求められる。


日本生態学会