| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-252 (Poster presentation)

糞DNA解析を用いた函館山キタキツネVulpes vulpes schrenckiの個体数推定

*天池庸介(北大院・理), 村上貴弘(北教大函・環), 増田隆一(北大院・理)

本研究の目的は、糞を用いたマイクロサテライトDNA解析により、北海道函館山に生息するキタキツネVulpes vulpes schrenckiの個体識別および個体数を推定することである。さらに、得られたマイクロサテライト遺伝子型のデータにより、集団内の遺伝的多様性の動態を考察する。函館山は、標高334 m、周囲約9.5 km、面積約3.26 km2と極めて小さな山であり、そこではキツネの生息が確認されている。しかし、そこは海と市街地に囲まれた陸繋島であり、その生息地は孤立していると考えられる。函館山のような閉鎖環境下に生息する野生生物の生態や遺伝的多様性を解明することは保全生態学上意義がある。分析に用いた糞サンプル(計150個)は、2009年から2011年にかけて各登山道から採集した。まず、キツネの糞であることを確認するために、ミトコンドリアDNAのD-loop部分配列をもとに設計された種特異的プライマーを使用して遺伝子増幅法(PCR法)を行った。その結果、119個の糞でキツネのものと判定された。それらの糞についてキツネのマイクロサテライト9遺伝子座位のPCR法を行い、119個中82個で遺伝子型を決定した(遺伝子型決定率68.9%)。この遺伝子型決定率は、糞DNAを用いた先行研究と比較しても比較的高い値であった。さらに、糞の性判別を行うために、キツネ性染色体上のZFX/ZFY遺伝子の塩基配列をもとにPCRプライマーを新たに設計した。そのPCR分析の結果、71個の性判別に成功した(性判別率59.7%)。3年間にわたって採集された糞サンプルのデータに基づき、函館山のキタキツネ個体群サイズおよび遺伝的多様度の動態を解析し、地理的に隔離された生息地における個体群の構造を検討する。


日本生態学会