| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-259 (Poster presentation)

遺伝的構造からみたケフサイソガニとタカノケフサイソガニのメタ個体群の違いについて: 東北地方太平洋沿岸での解析

*勝部達也(東北大・理・生物), 牧野渡, 鈴木孝男, 占部城太郎(東北大院・生命科学)

2011年3月11日の東日本大震災で発生した津波は干潟のベントス群集に甚大な影響を与えた。撹乱を受けた個体群は現在回復過程にあると考えられるが、干潟の生物群集は局所個体群でのみ成立しているのではなく、幼生の分散を通じて近隣の局所個体群との間でメタ個体群を形成していると考えられる。そのため、回復過程にある局所個体群における津波生存個体と津波後の新規加入個体との遺伝的な類似性は、異なる局所個体群からの幼生加入・定着の規模に応じて変化すると予想される。主に生存個体の繁殖により局所個体群サイズが増加すれば、津波生存個体と津波後の新規加入個体の遺伝子組成は類似し、逆に、異なる局所個体群からの移入による影響が大きければ異なると考えられる。また同じ湾内でも、外湾寄りの干潟と内湾寄りの干潟とでは、他個体群からの移入のしやすさも異なるだろう。全国の干潟で最も一般的なカニ類であるケフサイソガニ(Hemigrapsus penicillatus)と、その近縁種タカノケフサイソガニ(H. takanoi)は、その寿命(3年)や分散様式(浮遊幼生分散)は同じだが、ケフサイソガニが外湾寄りの干潟、タカノケフサイソガニが内湾寄りの干潟に生息すると報告されている。そのため、定着の規模に応じて変化する遺伝的な類似性の評価には最適な材料であると思われる。そこで本研究では、東北地方太平洋沿岸域の干潟で採取したケフサイソガニとタカノケフサイソガニの遺伝子構成を年級群ごとに比較し、大津波からの回復過程における他個体群からの移入の貢献度の相対的重要性を種間で比較する。


日本生態学会