| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-262 (Poster presentation)

マイクロサテライトマーカーを用いたスクミリンゴガイの微所的集団構造

*山本翔(奈良女子大院),岩口伸一(奈良女子大・理),川根昌子(奈良女子大・共生セ),遊佐陽一(奈良女子大・理)

スクミリンゴガイPomacea canaliculataは南米原産の淡水巻貝である。現在、世界中に分布を広げつつあり、水稲や在来水生植物等を加害して寄生虫の中間宿主となることなどから、世界・日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている。このような問題の多い外来種の集団遺伝構造を解明することは、個体群管理の観点からも重要である。

本研究では、マイクロサテライト4座位を用い、数十mから数十kmスケールにおける本種の集団遺伝構造を解析した。約20 km離れた奈良県奈良市と橿原市の2地域それぞれにおいて、隣接する水田3枚およびその排水路のセットを2地点で設定し、各水田または水路で2011年生まれの個体を約20個体採集した。その後、奈良市と橿原市の地域間・地域内の2地点間・地点内の水田水路間・水田水路内の個体間において、AMOVA(分子分散分析)およびFst値を用いて集団遺伝構造を評価した。

その結果、地域間・地点間・水田水路間のすべてにおいて、有意な遺伝的階層構造がみられた(p< 0.001)。特に橿原市では、隣接する水田および水路間のFst値中、大部分の組み合わせにおけるFst値が有意に0より離れていた。これらのことから、隣接する水田水路間における微所的な集団遺伝構造が明らかになった。

畦による水田間の移動の制限に加え、低い越冬生存率(奈良市では1%以下)によるボトルネック等により、水田ごとに遺伝的差異が生じた結果、微所的な集団遺伝構造がみられたと考えられる。このような微所的集団構造は、各水田にほぼ独立したメタ個体群が存在することを意味し、水田単位での個体群管理が少なくとも短期的には現実的であることを示唆する。


日本生態学会