| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-268 (Poster presentation)

Who is the most successful sire?: Male reproductive success of Bornean orangutans in a semi-wild population

*Tomoyuki Tajima

オランウータンのオトナオスには、一般的に頬ヒダなどの二次性徴の発達した優位形態(優位オス)と、二次性徴の無い劣位形態(劣位オス)の2タイプが存在することが知られている。スマトラオランウータンでは、こうした劣位オスが繁殖に成功していることが知られている(Utami et al., 2002)。一方で、ボルネオオランウータンでは、メスの受胎可能性の高い時期には、劣位オスが交尾に成功していない可能性が近年指摘されている(Knott et al., 2010)。本研究では、行動観察と遺伝解析を用いて、ボルネオオランウータンの劣位オスの配偶行動が実際に繁殖成功に結びついているのか調べた。2010年からボルネオ島マレーシア領サバ州にあるセピロク・オランウータン・リハビリテーションセンター周辺において野外調査を行った。個体追跡による直接行動観察をオス4頭(優位:1頭、劣位:3頭)とメス4頭について行い、近接時間、交尾、性器検分について記録をした。また母子5ペアを含む22頭からDNA試料を非侵襲的に採取し、11領域のマイクロサテライトマーカーを用いて父子判定を行った。父子判定した5頭のうち、2010年以前に生まれた3頭の父親は追跡したオスの中にはいなかったが、2011年以降に生まれた2頭の父親は追跡していた優位オスであった。この2頭の母親に対して劣位オスは配偶行動を行っていたが、結果的に繁殖には成功していなかった。これは劣位オスの交尾が受胎の可能性の低い時期に起こっていたことを示唆している。本発表では、オランウータンのオスがメスの排卵周期を察知できる可能性についても検討する。


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