| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-290 (Poster presentation)

ツキノワグマの夏期の行動に対する食物資源の影響

*根本唯(東京農工大学院・連合農学),杉田あき(東京農工大学院・農),小坂井千夏(神奈川県博),小池伸介(東京農工大・農),山崎晃司(茨城県自然博),梶光一(東京農工大・農)

これまで、ツキノワグマ(Ursus thibetanus)の行動生態に関する研究は、人里へのツキノワグマの出没が社会的に重要性が高いことから、出没が増加する秋に焦点を当てたものが多くなされてきた。夏期は、ツキノワグマにとって繁殖期に当たる。また、この時期は春からの腎周囲脂肪の低下が底を打つ時期であり、この時期に子育てを行うツキノワグマにとって、この時期の食物資源量の多寡が、仔の初期死亡率に繋がっている可能性が高い。このように、夏期は、ツキノワグマの生活史において重要な時期であると考えられる。

アメリカクロクマ(Ursus americanus)やヒグマ(Ursus arctos)では、主に食物資源が行動に影響を与えていることが報告されている。ツキノワグマにおいては、秋期の重要な食物資源である堅果が不作の年には行動圏や集中利用域間の距離を増加させることや、秋期には堅果が優先する林分を集中利用域として選択し、堅果が不作の年には様々な堅果樹種の林分を選択するようになることが報告されている。

本研究では、足尾日光地域においてGPS首輪を装着したツキノワグマの夏期の行動と食物資源量との関係、及び生息地選択について解析を行った。


日本生態学会