| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-325 (Poster presentation)

佐渡固有のツチガエル近縁種における空間分布と遺伝的構造

*山中美優(東大・農),小林頼太,関谷國男(新潟大・超域),宮下直(東大・農)

サドガエルはごく最近記載された佐渡固有種であり、トキのエサ動物としても注目されている。その分布は佐渡島の水田を中心に、不連続に広がっている。サドガエルは幼生のまま越冬するため、水田の中干しや冬期乾田などの乾田化が分布の制限要因として考えられ、生息地の縮小、分断化を引き起こしていると考えられる。一方、佐渡島ではトキと共存する自然共生社会を形成する活動の一環として、冬期湛水や江(水田の周囲の溝)の設置などの環境保全型農業が推奨されている。こうした活動は、サドガエルの個々の生息地の質を高めるとともに、生息地間の連結性を高める可能性があると考えられるが、そのためには個体群を維持し増加させるうえで効果的な保全・再生の場所を空間明示的に特定する必要がある。

本研究では、景観遺伝学的な手法を用いて生息地間の分断化の程度や生息地の質を評価することで、環境保全型農業によるサドガエルの保全、生息地の再生に役立てることを最終的な目標とする。空間遺伝構造は、近過去の絶滅や再定着、分布の拡大縮小などの歴史を反映した総体であるため、上記の評価に適していると考えられる。材料として、2012年6月に佐渡島で採取したサドガエル24集団288個体を用い、マイクロサテライト7座位においてフラグメント解析を行い、NeiのF統計量や、個体の遺伝構造のクラスタリング、距離に重み付けをした分子分散分析などを用い、サドガエル集団の遺伝構造を推定する。さらに遺伝構造と地形や土地利用などの地図情報を照らし合わせて移動分散の障壁となる景観要因を類推する。


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