| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-332 (Poster presentation)

モンゴル・フスタイ国立公園に生息する大型草食獣2種の生息地利用・食性の比較と森林への影響

*大津綾乃,高槻成紀(麻布大・院・獣)

フスタイ国立公園は現存する唯一の野生馬であるタヒが復帰に成功した公園である。タヒは1960年代には野生下で一度絶滅してしまったものの、動物園に残っていた個体の繁殖などを経て1992年に16頭をフスタイ国立公園に導入し、順調に個体数を回復して現在では300頭以上となっている。また同国立公園にはアカシカも生息している。同所的に生息する複数種の動物が同じ資源を利用する場合、資源をめぐって競合関係となる可能性が生じる。同時に草食獣が増加すれば、群落への影響においても問題が起こる可能性がある。そこで、大型草食獣であるタヒとアカシカの生息地利用・食性などの資源利用と、彼らが公園内の森林に与える影響を明らかにすることを目的とした。生息地利用と食性の結果から、タヒはおもに草原を利用し、イネ科などの単子葉類を採食するのに対して、アカシカは森林をよく利用し、単子葉類の他に樹木の葉などの双子葉類も採食していたことがわかった。このことから、資源利用においては両種の競合の可能性は低いと考えられた。森林への影響は同国立公園内の、アカシカの多いフスタイ山周辺とアカシカの少ないシュブーン峠の2カ所において、生息地利用や森林構成木の枯死率、若木の採食状態を調べた。その結果、フスタイ山周辺では森林構成木の枯死率が72.2%、若木の被食率が77.2%と高かった。一方シュブーン峠では影響は小さいと予測したが、樹木の枯死率が52.2%、被食率が71.6%とフスタイ山同様高い結果となり、今後森林を維持していくためには早急な対策が必要であるということがわかった。


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