| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-333 (Poster presentation)

同所的に生息するウミニナ属巻貝2種の空間分布

*廣瀬公子・伊藤萌(東京大学大学院・新領域),上村了美(国土技術政策総合研究所),山本智子(鹿児島大学・水産),小島茂明(東京大学大学院・新領域)

ウミニナ属 (Batillaria) は日本の干潟の代表的な巻貝である。奄美大島以南の南西諸島にはリュウキュウウミニナ B. flectosiphonata が分布するとされており、ミトコンドリアCOI遺伝子に基づく分子系統解析から、リュウキュウウミニナと姉妹種のウミニナ B. multiformis との間には明瞭な遺伝的分化がみられるが、その差異は他のウミニナ属の種間でみられる差異と比べてかなり小さいことが報告されている (Kojima et al., 2003)。両種は殻の形態変異にオーバーラップが見られるため、同所的に生息している地域では殻形態による種判別が困難である(廣瀬ほか 2012年度日本貝類学会大会)。しかし、マイクロサテライトに基づいた解析の結果から、両者は生殖的にほぼ隔離された別種であることが示唆された(廣瀬ほか 2012年度日本ベントス学会大会)。

本研究では、同所的に生息する干潟における各種の空間分布を明らかにすることを目的として、奄美大島北部に位置する坂下川河口干潟で採集調査を行った。干潟全域にわたって緯度経度一秒ごとに地点をプロットし、そのうちウミニナ属の集中する25点を調査地点とした。各調査地点、コアを3つ設置し、コア内のウミニナ属を上層、中層、下層と分けて採集した。両種は殻形態による種同定が困難なため、ミトコンドリアDNAの塩基配列を基に種判別を行った。その際、簡便に両種を判別するために、マルチプレックスPCR法を用いた2種のミトコンドリアDNAの簡易識別法を開発した。本発表では、これらの手法を用いて同所的に生息する干潟における各種の空間分布を解析した結果を報告する。


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