| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-338 (Poster presentation)

生物多様性に貢献する出光興産(株)愛知製油所の企業緑地

*川本宏和,田崎里実,石澤祐介,白子智康,上野薫(中部大・応用生物),味岡ゆい(中部大・現代教育),橋本良樹(出光興産(株)愛知製油所),南基泰(中部大・応用生物)

愛知県では人と自然が共生する社会の構築を目指すための行動計画として平成21年に「あいち自然環境保全戦略」が策定された.その戦略の一つとして,既存の企業緑地などをハブ・コリドーとして利用しエコロジカルネットワークを構成するという新たな提案がなされた.本研究では,愛知県知多半島の臨界工業地帯にある出光興産(株)愛知製油所の企業緑地に生息している動物調査及びネズミ類の遺伝的多様性及び餌資源調査を実施した.

2011年12月から2012年11月の期間,企業緑地内に14台のカメラを設置して撮影回数をカウントした.また,ネズミ類の捕獲調査ではシャーマントラップを9地点各10台ずつ設置し,2ヵ月ごとに捕獲した.捕獲されたネズミ類の毛もしくは指より全DNAを抽出し,ミトコンドリアDNAのD-loopを増幅して,遺伝的多様性を評価した.餌資源については糞中食物残渣からDNAバーコーディング法を用いて種同定を行った.

カメラトラップ法ではタヌキ,ニホンノウサギが特に多く,両種共に撮影回数は日没から日の出までが多く,ヒトが活動している日中にはほとんど撮影されていなかった.また、カラス,キジ,イエネコ,ハクビシンなどの生息も確認された.ネズミ類は、アカネズミ,ハツカネズミ,ニホンジネズミの計10個体が捕獲された.企業緑地内は森林帯となっているが,ネズミ類の種構成をみると低地帯に生息するネズミ類が多くなった.また遺伝的多様性については、3つのハプロタイプが確認でき主要なハプロタイプである6個体は緑地全域で確認された.糞中食物残渣からキク科,ケシ科などが確認できた.今後も調査を継続し、生物多様性に配慮した企業緑地管理法を提言していく予定である。


日本生態学会