| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-341 (Poster presentation)

森林-渓流生態系食物網における放射性セシウムの生物濃縮:福島県大沢川と群馬県大谷山流域の事例

*岩本愛夢, 岡田健吾, 境 優(農工大院・農), 根岸淳二郎(北大院・地球環境), 布川雅典(北大院・農), 五味高志(農工大院・農)

福島第一原発事故で環境中に放出された放射性Csによる、森林-渓流生態系内を構成する底生生物や陸生昆虫、両生類、リターなどの汚染実態を把握するとともに、食物網構造と生息環境に関連した生物濃縮について考察した。本研究は福島県二本松市東和地区大沢川流域(地表1m平均空間線量1.0-1.9μSV/h:文部科学省航空機モニタリング2012.6.28時点)と群馬県みどり市大谷山流域(地表1m平均空間線量0.2-0.5μSV/h:同2012.5.7時点)で行った。どちらもスギ・ヒノキ人工林を主体とした流域で、各流路50mの流路区間および河川から両岸20mの河畔域斜面を調査対象とした。放射性核種については、ゲルマニウム半導体検出器を用いて分析した。生物の放射性Cs濃度(Cs-134+Cs-137 Bq/kg-dry)は、いずれの流域もカエル類(大沢川流域:5118-11179;大谷山流域:721-1647)で高い傾向があり、サワガニ(大沢川流域:4688;大谷山流域:1090)やカマドウマ科(大沢川流域:7135;大谷山流域:658)なども高くなる傾向があった。このように、栄養段階が高く、地表付近を生息環境としている種は、放射性Cs濃度が高くなることが示唆された。ただし、同じ地表性生物であるオサムシ科(大沢川流域:1624;大谷山流域:263)は濃度が低い傾向を示す場合もあり、各生物種の炭素・窒素安定同位体比から、餌資源内容の推定、生息環境の選好性などを考慮し、放射性Cs汚染の生物濃縮過程を評価していく。


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