| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-344 (Poster presentation)

GISを用いた名古屋市緑地におけるコウモリの飛翔活動の分析

鈴木孝拓,大場真,林希一朗(名大エコ)

都市域における生物多様性評価手法開発の一環として、環境指標種としてコウモリ類に着目し、その採餌のための飛翔活動の空間的選択性について研究を行った。

2012年4月から12月にかけ名古屋市緑地部においてコウモリ(主にアブラコウモリPipistrellus abramus)の飛翔活動分布をラインセンサス法により調査した。2ルートで週1~2回、バッドディテクター(Pettersson社D200, Ultra Sound Adviced社 Mini-3)を用い、アブラコウモリの帯域である45kHzでモニターし、鳴き声が聞こえた地点でGPSにより記録した。記録データは調査範囲50 mメッシュごとに集計し、集計期間内のメッシュ内遭遇回数を合計しそれを調査日数で除算した遭遇頻度、1調査日にメッシュ内遭遇回数が1回以上の場合1とカウントしそれを調査日数で除算した遭遇確率を定義した。

飛翔活動の選択性について統計モデルを作成するため、メッシュにおける環境変数をGISを用いて次の6環境変数により分析した。平均照度、標高・傾斜(10 mグリッドデジタル標高モデル、国土地理院)、10m土地利用(細密数値情報、国土地理院)、平成18年度建物用途別現状調査(名古屋市)、IKONOS2(日本スペースイメージング)のマルチスペクトル画像解析によるオープンスペースと水場の面積、NDVI平均値。

その結果、オープンスペース、水場の面積と飛翔活動とにおいて正の相関が、NDVI値と負の相関がみられ、飛翔活動に適した開放的な空間的要因が大きく影響されていることが示唆された。日本において唯一の住家性のあるアブラコウモリであるが、人間活動との関係性は今までそれ程明らかにされてこなかった。今回の都市部における選好性モデリングは、開発による影響や人間活動との共存のための一資料として活用が期待される。


日本生態学会