| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-348 (Poster presentation)

Effects of marine protected areas: do the whole species recover?

*高科直(九州大・システム生命),舞木明彦(龍谷大・理工),巌佐庸(九州大・理)

世界的に数多くの漁業資源が資源管理の失敗等に起因して減少の一途を辿っている。この事実は漁業資源管理において,これまで行われてきた管理手法だけでは不十分であるということを示唆する。新たな資源管理手法として,海洋保護区の導入が近年注目を集めている。海洋保護区の導入は,漁場の一部を禁漁区とすることで,不意の乱獲や,環境の不確実性に対して緩衝作用を持つと期待されている。ところが海洋保護区の導入が生態系にどのようなインパクトを与えるかという事に関する科学的な知見は未だ不十分である。本研究では,個体群動態を予測するのに有用である数理モデルを用いて,海洋保護区の導入が被食—捕食系の個体群動態に与える影響を解析し,そこからどの種を保護すべきであるかということに関しても言及してゆく。

海洋保護区の導入によって被食—捕食系の個体群動態が受けるインパクトは,種の栄養段階や,どの種を保護し,どの種を漁獲するかという組み合わせ(以下,この組み合わせを管理計画と呼ぶ)に大きく依存することが分かった。捕食者は管理計画によらず,海洋保護区の漁場に占める割合が高まるほどその個体群サイズが増加した。一方で被食者の個体群サイズは,海洋保護区内で被食者のみを保護する場合に限り増加し,それ以外の管理計画においては,海洋保護区の割合が高まるほど個体群サイズを減少させ,場合によっては局所的な絶滅さえ引き起こす可能性があることが分かった。被食者の減少はトロフィック・カスケードに起因しており,このことから海洋保護区の導入において,(何を保護し何を漁獲するかといった)管理計画の重要性や生態系内の種間相互作用に着目する必要性が示唆される。


日本生態学会