| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-352 (Poster presentation)

エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の高山植物に対する採食圧ハザードマップの作成

*松本明日(酪農学園大学院・野生動物),日野貴文(酪農学園大学院・野生動物),吉田剛司(酪農学園大学院・野生動物)

エゾシカの生息は植生へ大きな影響を与える.特に環境変化に弱い高山植物が分布する高山地帯ではエゾシカの生息が高山植物の絶滅を引き起こす可能性がある.北海道内においてエゾシカの個体数増加に伴う生息分布の拡大により,西部に位置する樽前山(1,041m)では高山植物への被害が予想される.そこで高山植物を対象とした「エゾシカ被害予測ハザードマップ」を作成した.

ハザードマップは指標種分布域,エゾシカの痕跡,自動撮影装置を用いた個体数指標等をGIS上で組み合わせて作成した.まず踏査により指標種分布域を特定した.指標種の定義は「個体群が小さい,もしくは分布地点が限定されている種」とした.次に樽前山の森林限界以上の高標高域を33プロット(500×500m)に分けて2012年5月末から11月までエゾシカの痕跡の踏査を行なった.また各プロットに1台自動撮影装置(センサーカメラ・トレイルD55IR,Ltl Acorn 5210 B)を各20日間設置した.これらのデータを組み合わせてエゾシカによる植生被害が予想される指標種分布域を危険度「低~高」に分類した.

エゾシカの痕跡は山頂付近を除くほぼ全域,25プロットで確認された. 自動撮影装置で森林に隣接する12プロットでエゾシカが撮影された.作成したハザードマップから,エゾシカの植生被害危険度が高い指標種分布域は低標高,森林に近接していた. 樽前山においては北西部と南部の指標種分布域の危険度が高く,これらの指標種分布域の変化をモニタリングする必要がある.今後は他の高山でも活用可能にするためハザードマップの作成手順の簡略化についても検討する.


日本生態学会