| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-359 (Poster presentation)

異なる水分条件下における内生細菌の海浜植物コウボウムギ成長に対する促進効果

*松岡宏明, 園部愛美, 山路恵子 (筑波大・生命環境)

波崎海岸でのコウボウムギ(Carex kobomugi Ohwi)実生の生存率は極めて低い。その枯死要因は乾燥である可能性が示唆される。そこで本研究では、水分変動条件下において、コウボウムギ実生の生育応答と、植物生育を促進する細菌株の接種効果を明らかにすることを研究目的とした。

調査地から採取したコウボウムギ種子と砂質土壌を使用前に滅菌し、接種試験を行った。水分条件として現地、7月の土壌含水率を参考に、湿潤区(8.9%)、現地区(10.1%)、及び乾燥区(11.0%)を培養開始時の水分添加量を変えることで設定した。さらに、これら3条件区に細菌をそれぞれ接種した計6処理区を設けた。接種菌として、シデロフォア産生菌株であるBacillus sp.を108CFU/ mlに調整して接種した。8週間培養後、植物体を回収し、乾燥重量、根長、及び植物体無機含有量(P、Fe、Mg、Ca、K、及びNa)を測定した。

非接種条件下では乾燥区において、根長の増加、および地上部重量増加が確認された。細菌株を接種することで、どの処理区も非接種区に比べて、特に地下部の成長が促進される傾向にあった。また細菌接種により地下部Fe濃度は増加したが、水分処理区間では差がなかった。一方、地下部Caの増加は細菌接種区の乾燥区でのみ確認された。他元素での有意差はみられなかった。以上のことから、乾燥条件下においてコウボウムギは根の形態を細分化することで吸水効率を増加させている可能性が示唆された。また乾燥強度が高まるにつれて、内生細菌の根の成長といった促進的な作用は減少するが、地下部Ca濃度が増加することから内生細菌が乾燥ストレス下でコウボウムギ実生の無機栄養成分としてのCaの取り込みに関与することが示唆された。


日本生態学会