| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-362 (Poster presentation)

都市近郊における外来植物の分布

*崎尾萌(東京農工大学農学府),星野義延(東京農工大学)

府中市は東京の都市近郊にあって緑地が比較的残された都市である。府中市では1970年代に植物相に関する調査が行われているが、近年の市域全体の植物分布の報告はないものの過去に記録のない植物が観察され、これまで稀であった外来植物の分布拡大が報告されるなど植物相に変化が生じている。本研究では府中市での植物分布を把握して、近年増加傾向にある外来植物の分布傾向を明らかにすることを目的とした。

調査は町丁目を単位とした区画に府中市域を区分して行い、出現したシダ植物以上の植物の種名(下位分類群名を含む)と開花・結実の有無を記録した。なお、面積の広い緑地は区画を分けて別に記録した。解析は2004年から「府中の植物を記録する会」が継続してきた調査の結果を加えて行った。府中市には、多摩川によって形成された多摩川低地(低地)や立川段丘(台地)などの異なる地形が分布するとともに東京都立浅間山公園などのまとまった緑地も存在することから、これらの地域区分も考慮して解析を行った。

府中市全体で出現した植物の総種数(種以下の分類群も含む)は1048種で、外来植物は308種、外来植物率は29.2%であった。区画ごとの出現種数と出現外来種数の平均はそれぞれ151種、52種であり、各区画の面積と出現種数との間に有意な正の相関がみられたが(r=0.19, p=0.027)各区画の面積と出現外来種数との間には有意な相関はみられなかった(r=0.08, p=0.34)。外来植物率はどの区画においてもほぼ同じで約34.6%であったが、まとまった緑地の区画における割合は約23.1%と低い値になった。外来植物率と人口密度の間には有意な相関がみられた(r=0.30,p=0.0004)。出現種数と出現外来種数は低地と台地の区画の間で有意な差はなかったが(p>0.05)、外来種数率は低地で有意に低くなった(p=0.27)。


日本生態学会